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ヨタばなし★スターメンバー バックナンバー:vol.51

●邦題ってつけ放題  

しかしまぁ、あれですね(いきなり)、海外の作品につける邦題はすごい。
涙が出るようなのがいっぱいある。
邦題を意識しながら映画観てね、終わって、エンドロールが流れてきて、「こんなにぴったりのタイトル(原題)がついてるじゃねーか、もったいない!」って気がついたりするわけです。ぼくはあの感じが嫌い。
とんでもないセンスの邦題が憎たらしいわけです(笑)。

えっとね、まぁまぁ最近の映画で邦題にがっかりしたのは『死ぬまでにしたい10のこと』、これは原題は『My Life Without Me』(直訳:私のいない、私の人生)です。主人公がビョーキで死ぬんだけどね、自分がいなくなったあとのことを考えて、あれやこれや準備するわけです。すべてが"その後"につながっていく切ない話で、なんと主人公の代理まで準備して死んでいきます。だからタイトルの真意は、My life without me, after I die.(私が死んだ後も続いていく、私のいない私の人生)なわけで、タイトルがすんごい重要なんだけど、『死ぬまでにしたい10のこと』って言われると「死ぬまでにいろんなことを楽しめてよかったね」と、そういう浅はかな感想になってしまう(泣)。もったいねー。

それからなんつっても歯がゆいのは『いまを生きる』です。原題は『Dead Poets Society』(直訳:死せる詩人の会)で、"どう生きるか"を扱った作品のタイトルに"死"を持ってきた秀逸なタイトルなのに、まさかの急転直下で説教じみた邦題になってしまった(涙)。

あと、『インドの踊るシェークスピア』ってゆー映画があるんだけどね、ものすごいダンサブルなマサラ・ムービーかと思って観てみると、『Shakespeare Wallah』(直訳:シェークスピア劇をやる人)っていう原題でジェイムズ・アイヴォリー監督の真面目ドラマじゃねーかよ。どこに"インドの"とか"踊る"とか書いてあるんだ(笑)。
あるいは有名どころで、コッポラの『地獄の黙示録』って悪魔の話でオカルトかな?と思って観ると戦争の映画で『Apocalypse Now』(直訳:今がこの世の終わりの日)だし、ライアンさんの私的なヒミツを赤裸々に綴ったのかと思った『プライベート・ライアン』はこれまた戦争の映画で『Saving Private Ryan』(直訳:ライアン二等兵の救出)。
『女はみんな生きている』っていうフランス映画は、女はみんな生きているが男はどんどん死んでいるのかもしれないぞ、と思って焦りましたが、言うこと聞かないダンナと息子vsお母ちゃんの全面戦争というドタバタコメディで、原題は『Chaos』(直訳:混沌)です。
『プリティ・ウーマン』を意識しすぎた『プリティ・ブライド』も、可愛い嫁って最高だぜ!と思ったら、原題はまさかの『Runaway Bride』(直訳:逃げる嫁)。涙がとまりませんね。
『愛と青春の旅立ち』はもう"愛"という以上は原題も男女だろうと思ったら、なんと『An Officer And A Gentleman』で男と男。
『愛と哀しみの果て』はひねりすぎて、どうせいちゃいちゃしたあと別れる男女の話かと思えば、原題は『Out of Africa』(直訳:アフリカから外へ)。
『俺たちに明日はない』も、そうか、ないのか、かわいそうに、ビョーキかな、と心配していたらまさかの『Bonnie And Clyde』でした。

えーっと、ぼくがバカなんですかね。

明らかな勘違いすら生まない、不思議タイトルも世の中たくさんあります。たとえばフランス映画の『あるいは裏切りという名の犬』、これは犬の話じゃないのはわかる。"裏切り"、"犬"っつったら思い浮かぶ言葉は"ケーサツの犬"とか"社長の犬"、逆らわないで敵にしっぽを振ってしまう手飼いの裏切り者って感じです。で、原題はどーゆーのかというと、『36, Quai des Orfevres』で、これはパリの警視庁の番地です。『パリ市警・なんちゃら通り何番地』ってゆータイトルになりそうなところを、ひねりにひねった。

そうかと思うと、『フィービー・ケイツの 私の彼は問題児(ドドンパ)』という完全にイッちゃってるタイトルの作品もあります。泣けてきます。えーっと、ドドンパっつったら最近だとあれですよ、『きよしのドドンパ』。ドドンパ全盛期だったら『東京ドドンパ娘』『ひばりのドドンパ』。ドドンパっちゅーのは日本の、しかも昭和の、ダンスシーンの象徴です。都々逸(どどいつ)とルンバの奇跡の融合。ルンバってゆーのはアメリカ経由で日本に入ってきましたが、キューバ産です。つまり、マンボと並んで一世を風靡した、ラテンのリズムが都々逸(どどいつ)と合体したとってもミラクルなダンスミュージックですよ。

『フィービー・ケイツの 私の彼は問題児(ドドンパ)』・・・前半は出演者の名前だから客寄せパンダみたいなもんで、まぁいいとして、『私の彼は問題児(ドドンパ)』・・・この作品はこわくて観てませんが、いろいろ想像を掻き立てられる不思議タイトルです。問題児=ドドンパ、だとして、私の彼はジャパキューバン(※そんな言葉はありません)で、それが問題なのか、そうか、これは人種に対する差別や偏見という深刻な問題を真っ正面から捉え、偏見を乗り越えてジャパキューバンのカレシさんとつきあっているフィービー・ケイツさんも一緒に世の中の矛盾にたいして戦いを挑むという、感動のドラマに違いないぜ!と思ってはおりますが(願望)、念のため原題を見ると『Drop Dead Fred』(直訳:フレッド急死)で、夫を失い、職を失い、車を失い、財布を失い、不幸のどん底にいるエリザベスの前に幼い頃の空想の友達"フレッド"が現れて、そいつのせいでエリザベスが行く先々でトラブルに巻き込まれるというファンタスティック・コメディらしい(泣)。夫を失ったエリザベスの空想の友達は"私の彼"ではないんじゃないかという致命傷もさることながら、果たしてこの作品に、ドドンパは関係あるのか?ついでに富士急ハイランドのジェットコースターはどのへんがドドンパなのか?という究極の疑問が残りつつ、この作品はこわくて観てません。観ません。(観るかもしれません)

そうそう、ちょっと話は逸れますが、"ドドンパ"みたいな昭和のダンスミュージックはいろいろあるね。
橋幸夫の「スイム!スイム!スイム!」は、ニッポンジンが無理矢理波に乗ってみた、アメリカ産サーフ・ミュージックを和風にした"スイム"というジャンル。ザ・ピーナッツの「スク・スク」はボリビア産ミュージックを和風にした"スクスク"というジャンルで、原由子の「東京タムレ』とか谷啓の「愛してタムレ」とかはタヒチ産"タムレ"だし、メキシコ産マリアッチとアメリカ産ポップスを混ぜたのが三田明の「恋のアメリアッチ」で代表される"アメリアッチ"・・・
ジャンルの名称を曲のタイトルにとにかく押し込んだ感は否めませんが、とにかくこれが愛すべきニッポンの昭和ビートなのであーる。

えーっと、もちろん、秀逸な邦題もあります。
シャーリーズ・セロンが主役の『スタンドアップ』は原題が『North Country』(直訳:北国)なので、演歌ばりの郷愁を犠牲にはしたものの、ストーリーを言い当てた"立ち上がれ!"っちゅー邦題は日本人にはやさしい(笑)。
『シリアナ』も秀逸。ワシントンのシンクタンクで実際に使われているコードネームそのままの原題『Syriana』をカタカナにしたのは奇跡に近いですね。
この映画は、もし邦題が『シリアナ』以外になっていたら、映画丸ごと台無しだもん。
『Vフォー・ヴェンデッタ』みたいに、ちゃんと意味があって『V For Vendetta』を読んだまんまのやつもええです。たとえ、vendettaという言葉の意味が、"敵討ち"だと知らなくてもです。『かたきうち の か』という邦題にしなくてよかった(笑)。
日本語にならない難しい英語タイトルの映画で、『As Good As It Gets』を『恋愛小説家』とか、『Something's Gotta Give』を『恋愛適齢期』とかも、うまいです。
マイケル・J・フォックスの『摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に』も原題の『The Secret Of My Success』どおり『僕の成功の秘訣』じゃだめだろうし、『メリーに首ったけ』も『There's Something About Mary』という原題どおり『メリーには何かある』よりいい感じがします。

しかしまぁ基本的には、こーゆー原題と邦題のギャップが許されるのはB級ホラーとか、もっと褒めてしまうとZ級の傑作、ある種のコメディだけです。
『悪魔の毒々モンスター』、原題は『The Toxic Avenger』(直訳:毒の復讐)
『女子高生チェーンソー』、原題は『Scream Bloody Murder』(直訳:叫ぶ血塗られた殺人)
『死霊の盆踊り』、原題は『Orgy of the Dead』(直訳:死者のバカ騒ぎ)
『死霊のはらわた』、原題は『Evil Dead』(直訳:邪悪な死者)
いいじゃないか、と強く思いますね。毒々モンスターの何たるかはよくわかりませんが、女子高生がチェーンソーをぶんまわす話でもありませんが、とにかく、ゾンビが盆踊りを踊って何が悪い。死霊に内蔵があって何が悪い。
『バタリアン』、原題は『The Return Of The Living Dead』(直訳:生ける死者の帰還)
えーっと、バタリアン(battalion)っちゅーのは"大隊"のことです。ゾンビさんのバタリアン。そしてオバタリアンのバタリアン。どっちも恐ろしく、またどっちも懐かしいですよね(涙)。とにかく、いいじゃねーか(もうどーでも)。
『えびボクサー』、原題は『Crust』(直訳:甲殻)
『ホネツギマン』、原題は『The Naked Man』(直訳:裸の男)
もう原題は完全にどっか吹っ飛んでますけど、いいじゃねーか、なぁ。

誰がつけてるんだろう、これらのとんでもねー邦題を。とにかく、すでに使われてるタイトルはだめらしいので、苦労しているのは確かです。
ただね、まずいんじゃないかと思うようなのがけっこうあるんだよ。あのね、国際社会なわけですよね、で、英語ができると重宝がられたりします。だから、カタカナで書いた"明らかに間違った英語"っちゅーのだけはやめたほうがいいんじゃないか。

気になるのはたとえば、国連ビルをほんとに撮影に使っちゃったのが話題のニコール・キッドマン主演『ザ・インタープリター』ね。これは『The Interpreter』(直訳:通訳)ですが、『ジ・インタープリター』にしないと、うっかりこれで言い慣れちゃうと恥ずかしいことになります(泣)。同じく『ザ・インターネット』(原題は『The Net.』)も『ジ・インターネット』にしないと。
でもね、そーかと思うと原題『The Island』はなぜか"ジ"が抜けて『アイランド』とか、『The Village』も"ザ"が抜けて『ヴィレッジ』とか。とにかく"The"はよく無視されます。英語で"the"とか"a"って大事だって習ったのに。
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』っていう映画も、暴力の歴史ってことは世界の戦争の歴史なんだろうと思って観てみると、非常に個人的な話で、"The"じゃなくて『A History Of Violence』なのに納得。"ア"ってつけとけばいいのに。
ケビン・コスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』は惜しいです。原題は『Dances With Wolves』なので正しくは『ダンシズ・ウィズ・ウルブズ』ですが、
とにかくウルフを複数形にすることには成功しました。
で、ウルフにできたんならできるだろうと思うのが『ステップフォード・ワイフ』で、原題『The Stepford Wives』どおり『ザ・ステップフォード・ワイブズ』にしたほうがよろしいんじゃなくて?
それから『アダムス・ファミリー』みたいな完全な読み違いもまずいです。世界中のアダムズさんが、日本人にはアダムスさんと呼ばれてしまうキケンがあるので、『The Addams Family』は『ジ・アダムズ・ファミリー』にしたほうがよろしいかと。

というわけで、映画タイトルにつけられる邦題のクオリティを憂いてみましたが、ぼく的にいちばん腹が立つ邦題は『セレンディピティ』、意味がわかんねー。しょーがないから調べます。
『Serendipity』、意味は"掘り出し物をみつける才能"ですか。ははーん、わかった!骨董市の話ですね!絵画かなんかを買って、みんながニセモノを買わされていく中、主人公だけはものすごい目利きなので惑わされない。で、ミリオネアへの階段を上っていくという、ある意味シンデレラ・ストーリー、というか成り上がり物語ですね!そうか、そーゆー話か、なるほど。今度借りてきて観てみます。
あ、借りてくる前に念のため確かめとこう。なになに?
それは、恋心ふるえる"幸せな偶然"。運命の人なら、きっとまた逢える。
!!!
青空市はどこで(涙)?
恋人たちのニューヨーク?
あ、そっか、ニューヨークで青空市か。それは、恋心ふるえる“幸せな偶然”。
運命の絵画なら、きっとまた逢える。(食い下がれ)

そしていちばん気に入っている邦題は、テレビ・ムービーですけど、断然『特攻野郎Aチーム』です。これは原題だと『The A-Team』だけですからね、特攻野郎という泣けてくるほどに勇ましい好奇心をそそる枕詞をつけたあたりが、なんとも秀逸です。素晴らしい。素晴らしすぎる。

芸術の秋ですからね、たくさん映画を観て心を豊かにしたいと思います。

2006.10.01

日刊ヨタばなし★スターメンバー




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