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ヨタばなし★スターメンバー バックナンバー:vol.47

●俺たちは、ただの青海苔を売るのか? それとも夢を売るのか?  

あのねー、すごいものを発見した。
ナガイの青海苔卓上瓶です。
鉄分たっぷり最高級青海苔は"糸あおのり"と呼ばれるもので国内では四国の四万十川、吉野川の河口付近でしか採れません。
すごい!
全国の収穫量のおよそ半分が当社が買付けています。
す、すごい!

これさ、ご自宅にあったらラベルをよく見てください。
「海苔に小エビ(クルマエビの兄弟)が付着している物があります。無害ですので安心してお召し上り下さい。」
!!!
クルマエビの兄弟?
それはいったい何だろうか。ひょっとしたら、海苔にしてはゴージャス?

兄弟というのは何かというと、本人からみて傍系2親等の男性のことであり、通常は同じ母親のもとに生まれた男子を指します。本人がいて、親とか子とか縦の関係なのが直系、横並びなのは傍系です。

この場合の本人っていうのはクルマエビ。
クルマエビからみて傍系2親等のオスのクルマエビのことであり、通常は同じ母親クルマエビのもとに生まれたオスのクルマエビを指している、ように思われて仕方がありません。だって、クルマエビの兄弟はクルマエビだろ。ちゅーことは、「海苔にクルマエビが付着している。」でいいじゃんか。それを謙遜して小エビだなどと言っているのだな!しかも、クルマエビ(青海苔付き)ではなく青海苔(クルマエビ付き)として売っているのではないか。
す、すごい!謙虚!
なんとも奥ゆかしい。
が、逆に考えると、ただの青海苔だと思うなよ、みたいな、猛アピールも感じないではない。

しかし、クルマエビという一般名詞に対して兄弟という言葉を使うのはなんともトリッキーである。
「海苔に石原良純(石原伸晃の兄弟)が付着している。」というのであれば、わかる。いや、あそこは三兄弟だ。海苔に付着しているのは石原宏高かもしれないぞ。前国土交通大臣・伸晃の兄弟は、天気予報士・ヨシズミか、衆議院議員・宏高か・・・そーゆー話ではない。なぜにヨシズミだけがカタカナなのか・・・そーではなくて、固有名詞に使ったほうがいいではないか。
ナガイさんの表示は、「海苔にある人物(人間の兄弟)が付着している。」というのと同じで、いったい誰なのか、よく考えないとかわらないように、巧みに仕組まれているのだ。あやしい。

あやしいので、ナガイさんに聞いてみた(笑)。

さるお「ナガイの青海苔買いました。そしたら小エビが付着してるって書いてあるんですけど、小エビが海苔にくっついてるんですか?」
ナガイ「ありがとうございます。海のものなので、小エビがどうしても、たまに入ってることもあるんです。」
さるお「海のものなんですか?」(四万十川はどうしたんだろう・・・)
ナガイ「はい。なので、小エビがどうしても一緒にとれてしまって、入ってしまう時もあるんです。」
さるお「小エビってどのくらいの大きさなんですか?」
ナガイ「粉砕されてますのでね、1〜2mmになっていると、そういうかたちで、ま、入ってしまう時があるんです。」
さるお「粉砕する前は、それは、クルマエビなんですか?」
ナガイ「そ、それは、ちょっと調べてから折り返しお返事させていただいてもよろしいでしょうか?」
さるお「じゃ、待ってます。」

あやしい。"クルマエビの兄弟"なんて考えに考え抜いたにちがいない不自然極まりない言葉を意識的に書いておいて、調べなければわからないのか?

ナガイ「もしもし、ナガイの海苔です。先ほどの小エビなんですが、やはり入ってしまうこともあると言うことで、食べても害はありませんから、だいじょうぶなんです。ただ、粉砕してしまうと、虫に見えたりなんかして、ご心配されるということで、あらかじめそういうことを書いているということなんです。」(巧妙なすり替えだ!)
さるお「クルマエビなんですか?」
ナガイ「いえ、ちがいます。」(すごい即答、言い切った!)
さるお「じゃ、クルマエビの兄弟なんですか?」
ナガイ「いえ、ちがいます。」(言い切ってるぞ!)
さるお「ちがうんですか?」
ナガイ「ちがいます。クルマエビというのはもっと大きいやつで、この小さいのは、ヨコエビという、まったく別のものです。ヨコエビは海にいて、青海苔は河口で捕れるんで、ちょうどその少し海水が混ざるあたりなんです。」(川に戻れてよかったが、また言い切った!)
さるお「ヨコエビはクルマエビの兄弟なんですか?」
ナガイ「いえ、本当にそれはまったく別で、だからその、"クルマエビの兄弟"というところは本当は消しとかないといけないんですが、ま、同じエビだということで、そういうことが書いてあるわけです。」
さるお「じゃ、ヨコエビはどういうエビですか?」
ナガイ「大きくなっても6mmくらいにしかならない小さいエビなんですね。"しらす"なんか買われると小さいエビが入っていたりする、ああいう感じのものです。あ、アミの佃煮ってご存知でしょう、ああいうものですね。」
さるお「・・・。あ、では、クルマエビの兄弟ではないけれど、とにかくエビの兄弟ではあるということですか?」
ナガイ「そうです。そういう大きなくくりで、ま、そういったものが粉砕されて混じっていると、そういうことになっているわけです。」
さるお「どうもありがとうございました。」

うーん、謙虚なわけではなかった。まるで奥ゆかしくない。ただの小エビじゃないか。だいたい、同じサイズに粉砕しておいて、付着というのもオカシイ。
「海苔に小エビのちぎれたのが混ざってることがあります。」って素直に書けばいいのに。

少しがっかりしながら、ヨコエビというのを調べてみると、「甲殻網・端脚目(ヨコエビ目)・ヨコエビ亜目に属する甲殻類の総称で、名称に"エビ"とあるがエビ目ではない」とのこと。
!!!
クルマエビの兄弟どころか、エビですらない。エビは甲殻網・十脚目である。
森林の落ち葉の下から川、沼、海底まであらゆる環境に多種が分布。生物の死骸や糞などを食べる分解者であり、大型動物のエサであり、人間にとっては利用価値がなく、カメのエサとして販売されている。
出たーっ!微生物。

うーん、これをクルマエビの兄弟と呼んでいたのか・・・
ナガイ式解釈によれば、死骸や糞などを食べるプランクトンでカメのエサとして売られているもの = クルマエビ・・・ものすごい飛躍だ!深い!

ならば、アミの佃煮も、糞食いか!カメのエサか!と調べてみると、アミというのはイサザアミのこと。
こちらもエビではなくプランクトン。アミだもん、エビじゃないよなぁ。
ということで、「海苔に小エビのちぎれたのが混ざってることがあります。」もまずい。正しくは「海苔にプランクトンのちぎれたのが混ざってることがあります。」となる。プランクトンというのが嫌なら"浮遊生物"でどうか。

うーん、これではたしかに夢がない。
ということで、僕はひとつの結論に達したのである。
ナガイさんは青海苔と一緒に夢を売っているのだ!
庶民の贅沢、平民の憧れ、そうだ、この青海苔にはクルマエビが入っているかもしれないんだ!やったよ、かあさん!クルマエビだよーっ!

どうせなら、「海苔に伊勢エビ(の兄弟)のちぎれたのが混ざってることがあります。」ぐらい思い切ってみてもいい。この上ない贅沢、そうだ、この青海苔には伊勢エビが入っているかもしれないんだ!やったよ、かあさん!とうさんも!伊勢エビだよーっ!明日はホームランだよーっ!
夢が広がるではないの。一家は幸せである。お金がなくても、伊勢エビ1尾が買えなくても、この最高級青海苔7g入り270円さえあれば、伊勢エビが食卓に乗っているも同然だよね、おにいちゃん!そうさ、おまえの言うとおりだよ、いもうと!
ええ話だ。泣けてくる。入ってるのがヨシズミじゃなくて本当によかった。

ところで、泣けてきたところで、今度は小エビの謎が脳裏をよぎってしまいました。そもそも、小エビってなんすか。

こうして話はヨシズミから小エビへと再び大きく転換してオカシナ方向にシフトしていきますが、みなさんついてきてください。
つまり、中華料理のエビチリ、あれはできれば正確に、小エビチリと呼んでいただきたいな、というセコイ話です。みなさんついてきてくださいね。

サクラエビというのがあるじゃんか。あれは確かに小さいエビなんだけど、なぜか小エビではなくてサクラエビって名前で呼んでます、たぶん、多くの人は。
でもまぁ、あのサイズのやつでサクラエビ以外のだと、名前がわからないので、小エビです。小さいんだもん、文句ないです。
甘エビはどうかというと、寿司として出てきたり刺し身の一角を構成していれば甘エビなんだけど、なんとなく、もし仮に茹でてしまってクルッと丸まってしまうと、一気に小エビに転落です。僕にとっては、生食だけが甘エビですよ。
こういう"名前が売れてる"エビたちは、いいんだ、それで。

期待と現実のギャップに一喜一憂するのが、非常に抽象的というか、感覚的というか、つまり、"エビ"と"小エビ"ですよ。

サイゼリアの"小エビのカクテルサラダ"。あれはね、小エビとあらかじめ言われているのに、ちょっとがっかりするほどの極小エビで、軽く憤慨します(笑)。
サクラエビが小エビで文句ないのに、なんでサイゼリアには文句たれるのか、疑問ですが、とにかくね、もうちょっと大きい小エビを乗っけて持ってきてくれ。
究極は中華料理のエビチリ。高価なのばかり食ってれば、大ぶりで身の締まったぷりぷりの立派なエビで文句ないはずですけど、いわゆる平民のエビチリというのは、小エビチリではないのかなーと、ちょっと誰かに当たりたい気分です。今のところ"小エビチリ"という消極的なメニューは見たことないからね、"小エビチリ"っていう名前でメニューに乗せておいて、注文する人がいるかどうかはともかく(笑)、たのんだら普通のエビチリが出てくる。するとこれはもう「小エビってゆーわりに立派だね」なんつって、一家は幸せになれるわけですよ。明日はホームランが打てるかもしれない。

このように(どのように)どうでもいいような大事なことを考えてみると、小エビってなんすか、っていう案外誰も知らないような疑問に突き当たってしまうので、やっぱりまた聞いてみました。今度は『エビとカニの水族館』さんに。メールでね。

さるお
主に食材(または加工品)としての表現で"小エビ"と言いますが、小エビの定義(のようなもの)はあるでしょうか?サイズなど、呼び方を決定する定義があればおしえてください。たとえば、桜エビは小さいけれど、小エビではなく、桜エビという名前で呼んでいると思います。甘エビもそんなに大きくないけれど名前で呼んでいます。これは単に、みんなが名前を知っているエビだから名前で呼んでいるということでしょうか?
また、甘エビについては、生食のイメージが強いのですが、火を通すと呼び方が変わるといったことはありますか?

館長
特に小エビの定義という訳ではありませんが、メスが腹部に卵を抱いて幼生が孵化するまで保護するものを指し、卵が抱えやすいように第2腹節が幅広くて前後の節に覆いかぶさっているのが特徴です。ただし、一般には小型のエビの総称として使われることが多いようです。小エビに含まれるのはクルマエビ類、オトヒメエビ類、ザリガニ類、イセエビ類を除いたグループです。英語では大型のものをロブスター、中型のものをプラウン、小型のものをシュリンプといって区別しているので、シュリンプと呼ばれるものが小エビだと思って下さい。
漢字では小蝦、大型のものは海老と書きます。甘エビは 標準和名がホッコクアカエビなのに商品名が有名になった好例ですが、火を通したら名前が変わることはありません。大量に養殖・輸入されているブラックタイガーはウシエビといいます。クルマエビの場合は大きさによって流通名がマキ、サイマキ、クルマエビと変わります。

さるお
クルマエビ(1種類なのかどうか詳しく知りませんが)は、小エビですか?
クルマエビの赤ちゃんなら小エビとして分類できるとか、クルマエビの中のある種類は小エビとして分類できるとか、そういったことをおしえてください。

館長
クルマエビは小エビではありません。なぜなら、メスは腹部に卵を抱かず、泳ぎながら放卵するからです。クルマエビ類は世界中で28種が知られています。

さるおのバカな質問に、丁寧に答えてくださった。館長さん、どうもありがとうございました。
お腹の卵を孵化するまで保護するかどうかか。なるほど、大きさに文句をたれている場合じゃない。生物学的に理路整然とした分類があるわけですよ。あたりまえでしょーが。
小エビは小蝦、エビは海老。字が違うなんて知らなかった。いや、勉強になりました。

そして、!!!
館長:クルマエビは小エビではありません。

ここで一気にナガイに戻ります。「海苔に小エビ(クルマエビの兄弟)が付着している物があります。」には二重の罠が!(いや、二重の夢が!)
プランクトンじゃどーしよーもねーなってことで(夢がないので)、小蝦だったことにして、小蝦でもまだかっこつかねーよってことで(夢が足りないので)、クルマ海老ということにしたのですね!思った以上の飛躍です。
す、すごいーっ!
青海苔と一緒に夢を売っているのではない。夢に青海苔をくっつけて売っているのだ!
ここまできたら、やっぱり伊勢エビということで。"の兄弟"という意味のわからない言葉をつければだいじょうぶさ、なんとかなる。

2005.12.01

日刊ヨタばなし★スターメンバー




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