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ヨタばなし★スターメンバー バックナンバー:vol.39

●同じ衣装で登場しないでください


ほぼ定期的に月1で集まる友達がいる。こないだ会った時におもしろい話になった。

『シンドバッドって何した人?』

どうしてそーゆー話になったのかは覚えていない。どーでもいいくだらない疑問は長ばなしの序章にすぎなかった。

僕の中では、シンドバッドのイメージといえば、頭に白いターバンを巻いて、上半身はハダカ、黄色か赤のハラマキのようなものをおなかに巻いて、その下はゆったりしてMCハマー(なつかしい)みたいな白いズボン、手には半月刀を持っている。ということはシンドバッドは盗賊か。活躍の舞台は砂漠と思われる。ではあの歌は何なのだろう、「渚のシンドバッド」。シンドバッドは海の男か。海賊か。そうだ、海賊だ。だって盗賊はアリババだもん。アリババも僕の頭の中では同じ格好で登場してしまう。「アリババと40人の盗賊」アリババと?ということはアリババ自身は盗賊ではないのか。ひらけゴマ。そうそう、それがアリババ。ひらけゴマで何が開くんだっけ。洞窟かな。ではアラジンはいったいどこに登場するというのか。アラジンだって同じ格好である。シンドバッドもアラジンもアリババも同郷?「アラジンと魔法のランプ」。なぜアラジンは魔法のランプを持っているのか。魔法のランプをこすったのはアラジンだっけ。ランプから出てくるハクション大魔王みたいなやつは何個願いを叶えてくれるんだろう。なんとなく3個がいいような気がする。なんでも叶えてくれるというくせに「3個なんてケチなこと言わないで何個でもいいことにしてください」という願いは却下される。なぜ例外規定があるのか。こする回数が3回なのかもしれないぞ。で、40人の盗賊は何を盗もうとしたんだっけ。あれ、シンドバッドって誰よ? 何した人?そーいえば空飛ぶ魔法のじゅうたんが出てきていない。シンドバッドを乗せよう。それじゃ船乗りじゃなくなっちゃうじゃん。

話はこれで終わるはずがない。

ロビンフッドって緑色の服着てる人だよね。え、それはピーターパンじゃないの。ピーターパンはほんとの話じゃない。ロビンフッドはほんとにいたのか。いたんじゃないか。何した人だろう。弓持ってると思う。リンゴ射る人でしょ。それじゃウィリアム・テルは?ウィリアム・テルがリンゴ射った人だ。何のために?どういういきさつでリンゴなんて射るのか。ロビンフッドの方はナイフじゃないの?小さいやつ。だからそれはピーターパンだってば。でも何か持ってるよ。手ぶらじゃ弱いもん。とにかく森にいるんだよね、ロビンは。ほらやっぱり
緑色の着てるんだよ。ロビンは若いよね。うん、若い、年とらないってことない?だからそれはピーターパンだってば。ウィリアム・テル序曲って何かの序曲にすぎないんだよね。序曲のうちからすごいよね。だからその後がもっとすごいんだよ。何したんだろうね。

こーゆーときというのはハマっているのできりがない。いつもどおり夜中までに家に帰ったのは賢い友人たち。なぜか取り残されてハマったのは僕を含めオトナの男ばかり4人である。空は白々と明けていき、独身の僕らは相当にヒマである。



【答え】アラビアンナイト編
(忙しい人は読まないでください)

同郷です。
「シンドバッドの冒険」「アリババと40人の盗賊」「アラジンと魔法のランプ」はすべてアラビア地方に伝わるおとぎ話集『千一夜物語』(『Arabian Nights' Entertainments』邦題『アラビアンナイト』)に収載されている。アラビアンナイトとは、お妃に裏切られて「女なんて嫌い!」とヤケになり毎晩新妻をめとっては毎朝新妻の首をはねるシャフリヤールという王様に、ある夜嫁いだ大臣の娘シャハラザードが"首をはねられない大作戦"として毎晩聞かせた楽しいお話で、彼女は朝になるとお話を"いいところ"でやめてしまうので王様は続きが聞きたいから殺せない、というそのルーツ自体が物語になっているおとぎ話集である。
なんで1001夜なのかというと、千は「たくさん」を表しそれに一を足すと「無限」だからだとか、偶数より奇数の方がいいんだとか、諸説ある。どうでもいいが、同じ理由で101匹わんちゃんは101匹なのだろうか。

ちなみに僕らが知っているアラビアンナイトは、18世紀の始めごろにガランというフランス人がアラビア語からヨーロッパ向け(フランス語)に訳した物のさらなる翻訳本である。しかしこのガランという人、もともとは存在しなかった「アリババと40人の盗賊」「アラジンと魔法のランプ」を自分で創作して付け足してしまったようだ。つまりこの2話はじつはヨーロッパ生まれである。ヨーロッパバージョンは脚色が著しく元祖アラビアンナイトとは内容がかけ離れているかもしれない。

「アリババと40人の盗賊」
やさしく正直者のアリババといじわるカシムは兄弟で、ある日アリババが盗賊のマネをして盗賊たちのアジトになっている洞窟に行き「ひらけゴマ」と言うと扉が開いて金銀財宝がざーくざく。いそいそとそれをもって帰る。いじわるカシムもまねをして洞窟に行くが帰りの呪文を弟に聞いてくるのを忘れてしまった。そこにアジトの主が戻ってきて殺されてしまう。

「アラジンと奇跡のランプ」
なんと、悪ガキアラジンは中国在住、お父ちゃんはアラブで仕立て屋をしていた。そこにアフリカから魔法使いがやってきて、奇跡のランプをとってこいと言って魔法の指輪をくれる。ランプと指輪と宝石なんかも手に入れたアラジンがランプを渡さないと言うと、ムカついた魔法使いはアラジンを生き埋めに。アラジンは指輪の魔神にたすけてもらって生還。なんだかわけのわからないランプを売り飛ばそうと磨いているとランプの魔神があらわれたので、仕立て屋を継ぐよりは商人になろうとランプの魔神に金銀を出してもらっては売りさばいて大儲け。そのうちお姫さまに恋をするけれど、姫は政治絡みの諸事情で他の男と結婚しちゃうと知って、指輪の魔神を使ってこれを阻止。お姫さまと結婚してランプの魔神に宮殿を建ててもらった。何好き勝手やってんの、と怒ったアフリカの魔法使いに奥さんと宮殿を奪われたら、指輪の魔神にたすけてもらって女房をアフリカまで追って行き、魔法使いを毒殺。夫婦そろって中国に帰ると今度はアフリカの魔法使いの弟が復讐しに来たがこいつも返り討ち。よくわからないが最後はめでたく王様になりましたとさ。

「船乗りシンドバードの冒険」
バグダードの若く貧しい荷担ぎシンドバードが豪邸の前でセンチな歌を歌っていると、豪邸の主人に呼ばれる。その金持ちは自分を船乗りシンドバードと名乗り、お金はあるけどヒマなので、話し相手ができたというだけで7日にわたり荷担ぎシンドバードを拘束、自分がかつて経験した7回の壮絶な航海アドベンチャー風のヨタ話を聞かせた上に、7日間毎日100枚もの金貨をくれた。相当に退屈している。7日目に船乗りシンバードは「俺っちの若い頃の絶体絶命の冒険と比べたら、荷担ぎの方が気楽でいいじゃんよ。センチな歌なんて歌うなよ」と荷
担ぎシンドバードを励まし、荷担ぎシンドバードもなんとなくそうだなと思ってしまって意気投合。死がふたりを分かつまで仲良く一緒にくらしましたとさ。
ヨタ話の内容は1話から7話まで似たようなもの。退屈でしょーがないので航海に出ると怪物に襲われるかなんかで難破。漂流して島にたどり着くとそこにはたいてい怪鳥か大蛇か食人鬼がいる。航海の途中、シンドバード以外は必ず全員食われたりして死んでしまう。最後は商人の船にたすけられ、必ずなんかしらのお土産付きで家まで送ってもらい大金持ち、というものである。

【答え】弓の名手編
(忙しい人は読まないでください)

ロビンフッドはイギリスのシャーウッドの森に住む弓の名人で、強きを挫く弱い者の味方。robbing the rich and giving to the poor な Robin in the Hood 。日本で言えばねずみ小僧。みんなの人気者だけれど無法者なので、お役人たちが捕まえに来るとナイフでたたかったりもする。実在したとかしないとか、エルフだとか諸説ある。ややリアルな話では、失敗だった第3回十字軍でリチャード1世がオーストリアに拉致られて弟に王座を狙われたときに王のために戦った英雄。英雄といえども負けちゃったので弟のジョンはやっつけられず、リチャード1世がフランスで戦死した後王座に就いたのは弟であった。

ウィリアム・テルも実在したかどうかわからないが、こちらはスイスの伝説の人。オーストリアのハプスブルグ家の悪代官ヘルマン・ゲスラーに、お前の息子の頭の上のリンゴを射ぬいてみろい、と挑発されてリンゴを射ぬくと、ついでにキレて悪代官を殺害。それをきっかけにスイスが独立した。って大事なところだけはきっちり省略されていて偉業の中身がわからない。ウィリアム・テル序曲はいったい何の序曲なのか。


【船乗りシンドバードのヨタ話】
(本当にくだらないので忙しい人は読まないでください)

■冒険1
親の遺産で大金持ちの放蕩息子シンドバードが航海に出てある島に到着すると、なんとそこは島ではなくて巨大クジラ。焚き火をしたらクジラが起きてしまい、かわいそうなシンドバードはひとりだけ逃げ遅れて漂流したが、セイウチの養殖をしている島に漂着して冒険談を披露しファン獲得。王様にも気に入られて大儲けして家に帰った。

■冒険2
より金持ちになったシンドバードは退屈なのでまた出港。怪鳥ロックの住む無人島でうっかり寝ていたらかわいそうなシンドバードひとりだけが仲間においてけぼり。財産も持って行かれてしまった。ロックの足に体を縛りつけて脱出したけど今度は大蛇の住む島に。そこで金剛石を採りに来た商人と会い、家に送ってもらった上に金剛石までがっぽりもらってまた大儲け。ちなみに金剛石の採り方はきわめて他力本願。谷底に肉の塊を投げてロックに拾わせてから大声でロックを驚かす。びっくりして肉を離したらめり込んでいる金剛石だけを取る。

■冒険3
贅沢な暮らしに飽きたシンドバードは退屈なのでまた出港。今度の島では毛むくじゃらの獣に船をとられてしまった上に人食い巨人に遭遇。焼き串で反撃しながらイカダで脱出するがたどり着いた島には大蛇(冒険2と同じ島か)がいて、シンドバード以外を全員丸飲み。翌朝通りかかった船に救われてみればその船長は前回自分を置き去りにした船長さん。シンドバードは無事財産を取り戻した。

■冒険4
贅沢な暮らしに飽き足りないシンドバードは退屈すぎるのでまた出港。素っ裸の黒い男たちがいる島でごちそうを振る舞われたが、こーゆーときはなぜか感が働くシンドバード、ぜんぜん食べずに体がブクブク膨れる毒をまぬがれた。もちろんシンドバード以外は死亡。裸の黒い男たちは食人鬼。胡椒を積む船にたすけられて彼らの島へ行って暮らし始めて結婚するが、この島では配偶者の片方が死ぬともう片方は生き埋めという決まりがあった。奥さんが死んで井戸に埋められたかわいそうなシンドバードは、他の犠牲者を殴り倒して食料を奪い、出口を見つけて脱出。井戸の底の死者たちからはぎとった財宝を売り飛ばして大儲け。

■冒険5
より贅沢な暮らしに飽きたシンドバードは退屈で退屈でまた出港。怪鳥ロック(冒険2と同じ島か)の卵を食おうとして親鳥の反撃に遭いあえなく船を失った。やっとたどり着いた島で川にさしかかり、よぼよぼした老人を肩車でたすけてやったのが大失敗。相手が死ぬまで肩から降りない海の長老だったのだ。おそろしいね。おかげで長老を肩に乗せたまま生活するかわいそうなシンドバード。いいかげん嫌になったので酔っぱらわせて振り落として殺害。帰りはヤシの実を売った金で真珠を仕入れて大儲け。

■冒険6
懲りないシンドバードは退屈なのでまた出港。難破して漂着した先でシンドバード以外は全員餓死。川伝いに脱出をこころみてたどり着いた先で得意の冒険談を披露して王様のハートをわしづかみ。お土産付きで家に帰って大儲け。

■冒険7
あまりに贅沢すぎる暮らしに飽きたシンドバードは最後の航海のつもりで出港。今度は海の怪物に飲み込まれてしまった。たどり着いた島からイカダで脱出しようとしていると老人がたすけてくれた。イカダに使った白檀を売って資金を作り老人の娘と結婚したが間もなく老人は死去。話は飛んでこの島の男は春になると羽根が生えて空を飛ぶ。僕にもやらせて〜と言ってひとりに捉まって飛んでみたけれどかわいそうなシンドバードは山の上に置き去りに。好みのタイプの美少年ふたりにたすけられて山を下るとさっき自分を置き去りにした男が蛇に飲まれそうになっている。しかたがないのでたすけてやっているうちにこの島の男は悪魔だということがわかった。奥さんと手当たり次第に金目の物をバグダードに持ち帰って大儲け。


答え探しで翌日の朝も空は白々と明けていき、僕は相当にヒマである。
いろいろと忘れてることや知らないことがあっておもしろいね。これ全部読んだ人がいるとすると、空はまた白々と明けていき、読者も相当にヒマである。

2004/06/01

日刊ヨタばなし★スターメンバー




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