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●マニア
春になり、日差しが心地よい季節になってくると、クークズ・ハイハットの仕事も活気が出てくる。Tシャツ屋というのは、意外と季節労働、肉体労働なのよん。
先日、ボクの家では衣替えをした。というか、半袖Tシャツをタンスの手前に入れ替えただけだけどね。ついでなので、Tシャツの整理をすることにした。
ボクは、んもーばっかみたいにTシャツを持っている。
その辺のお店で買ってくることもあるし、コンサートに行って買ってくることもある。
インターネットで海外のショップに注文することもある。そのうちのいくつかは1度も袖を通されることなくタンスの肥やしになってしまうわけなんだけど、どうしても捨てられん。
高額な関税に恐怖しながらもやっと入手したマリリン・マンソンのTシャツ。買って数週間後に渋谷のお店で見たときは唖然としたっけ...これって日本に入ってきてないやつじゃなかったのけ。
マイケル・ジャクソンのジャパンツアーのTシャツなどは、そのうちマイケルさんが白人になったらオークションに出そう、そうしよう。(たぶん近い未来の出来事かもね)だからこれも取っておかなくては。あ、ちなみにもう時効だと思うから書くけど、マイケルさんといえば、ヒストリーとかなんとかいうアルバムのジャケットやらポスターやらを覚えている人はいますでしょうか?マイケルさんが銅像になってるやつ。
やー、正確に言うとブロンズではなくて、金像とか銀像だったと思うんだけど。あれを初めて見たとき、「お!はなはじめ!」と思ったものだ。それ以来どこでそのポスターを見かけても、どうも笑ってしまう。いろんなもんかけられてたよねー。あんまりしぶいデザインなんで虎視眈々と狙い続け、ついにそのポスターを剥がしてき
たこともありました...ま、軽犯罪程度となら引き替えにしてでも手に入れたいモノというのは世の中けっこうあるので、というか、軽犯罪はよくないよね、そうだよね、とにかくごめんなさい。
まぁ、Tシャツというのは基本的に単価がそれほど高くないモノだから集めていてもフトコロは苦しくない。500円玉LOVEな貧乏人のボクにピッタリのプチ趣味。
そんな貧乏人のボクだけど、数年前、べらぼうに高価なTシャツを買ったことがある。
チープ&シックで展開しているMOSCHINO(モスキーノ)のTシャツがそれ。しかも、イタリアのミラノ本店で買ってきた正真正銘、純正モスキーノ。自分でも不思議なんだけど、唯一ボクが好きなブランドがモスキーノだったりする。ハート型とエナメル素材を多用して、これでもか!とアピールしてくるあたりがどう考えても安っぽい。「失敗の反対の反対は成功なのだー」とバカボンパパも認めてしまいそうな大阪的【ブランド感】が漂うどころか露骨に匂う。チープというのは値段のことではなくて、雰囲気なんだろうなぁ。シックというのは...いや、かなりギラギラしてるから、ちょっと上品とはいえない。はっきり言ってド派手。
残念ながら、日本には男性モノがほとんどないので、海外に行ったときにはここぞとばかりに必ず買ってきちゃったりする。
さてさて、ボクが買ったモスキーノTシャツの価格、なんと3万円!単なるTシャツ1枚で3万てことはないだろうと思ったけど、モスキーノ&Tシャツマニアとしては買わないわけにはいかないだろー。
値段もさることながら、作りがまたすんごい。ネイビーの半袖Tシャツの胸元にMOSCHINOの文字がある。プリントなんかじゃない。スパンコールやらラメラメのモールやらビーズやらがわさわさとくっついて文字を作っている。おかげさまで胸元が妙に重い。ちょっとつらいぐらいに、かなり重い(笑)。しかも透明のテグスで縫ってあるので、裏側がチクチクする。とりあえず、実用性はまったくない。
今でこそ、タンスの肥やしにしておくだろうけど、若かりしボクはどうしてもコイツを着てみたかった。「1度だけ着たら飾っておこう」って思ったのが間違いだった。
さすがにこのTシャツを着ていた時は、友人達にも驚かれた。
「どこで見つけてきたの?」
「自分で作ったの?」
「なんかそれ、派手ね...」
などなど、多様な意見だったけど、ボクとしては大満足。
Tシャツはインパクトだ!!
共感だとか反感だとかそんなことはどうでもいい。そのシャツ1枚に人生かけてるわけじゃなし、そのTシャツで【ボクらしさ】の一部分を表現できればそれでよろしくてよ。
でまぁ、お披露目会は大成功だったんだけど...
その日の夜、Tシャツを脱いでなんとなぁ〜く洗濯機に入れてしまったボク。おしゃれ着洗いの洗剤じゃなくてぜんぜん普通の洗濯洗剤を入れてしまったボク。しかもジーンズなどゴワゴワ系のものと一緒に標準コースで洗ってしまったボク。
細いモールは所々ほつれ、テグスが表からも顔を覗かせる...まさしく見るも無惨な姿とはこのこと。ゴミじゃないと言われてもちょっとやそっとじゃ信じられない、繊維とプラスチックのよくわかんないかたまりになってんじゃんよ。
ふと、ミラノでの出来事が甦る。
革のパンツを履いたいかにもイタリアンナイスガイな店員。
ハンガーに吊されたTシャツをじーっと見つめて動かないボク。
通りでは小型車がひしめき合いながらクラクションを鳴らしている。
まわりのお店のシャッターがガラガラと音を立てるところをみると、もうすぐシエスタなのかもしれない。
早く買わなきゃ。あれ、絶対ほしい。
430000リラ?
0が4個あっても気にするな。ここはイタリア。単位が違うんだ。たいした金額なはずはない。だってTシャツだもん。日本円で、えっと、えっと、30000円?まさか!
でも30000円。なにー!やっぱ0が4個じゃん!どうするどうする!ほれ!どうする!
「おかしなジャポネーゼが来たぜ」店員たちの会話がそんなふうに聞こえてしまうの
はボクが長時間ここを動かないせいかもしれない。
「いくら?」
「よんひゃくさんじゅう」*
「ほんと?」
「うん、ほんと」
どうするどうする!ほれ!どうする!
そして、また沈黙...
このTシャツには、イタリアの思い出とお店でのドキドキとはじめて袖を通したときの感覚、それら全てがぎっしりと詰まっている。大切なボクのタカラモノ。絶対に捨てられない。
きっといつの日にか、イタリアに行って修繕してもらおう...
※イタリアみたいに0がいっぱい付いちゃう国ってサウザンドを省略するのが一般的。
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