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ヨタばなし★スターメンバー バックナンバー:vol.28

●怒られのアフガン


何も知らない乗客を乗せた飛行機がビルやらペンタゴンやらピッツバーグの町に突っ込んだ。
マンハッタンの世界貿易センタービルはもうない。ちょっとすさまじいテロ事件。
いったい誰がどう責任をとって、どんなかたちで収束していくんだろうか。
この事件がひろげる波紋は、たぶんとてつもなく大きい。

事件当日の11日から12日にかけて、僕はある理由からTVに釘付けになっていた。
現地に僕の友達がいるのである。彼(日本人)は9日にニューヨーク入りし、世界貿易センタービルにほど近い某ホテルに2泊している。11日、事件当日は昼ごろのフライトでワシントン(到着地がワシントンというのも怖い)に飛ぶはずだった。事件が起きたのは午前8時台だから、昼のフライトで飛ぼうという彼は、まだホテルにいたか、もしかしたらチェックアウトしたか、そんなところだろう。とにかく、旅客機が、世界貿易センタービルに突っ込んだ瞬間、まさに、彼はそのビルのほぼ真下(これは大袈裟か?大袈裟だといいんだけど...)にいたことになる。
彼は生きているだろうか...。
彼はNTTの国際携帯電話ワールドウォーカーを持っていたのだが、マンハッタンをカバーしていたアンテナ付きの高層ビルが倒壊してしまった以上、携帯電話は不通、マンハッタンから出てくれないとつながらない。それでも僕は何度も飽きずに彼に電話をかけた。いつもお話し中。2度だけ、電源が入っていないか電話に出られない状態だと告げられた。いくらTVを眺めたところで、消息がつかめるはずもなかったが、僕は延々とTVの中のヒントを探し続けた。

人というのは、親が死のうが恋人と別れようが受験に失敗しようが、腹も減るし眠くもなる。心配し疲れた僕は眠くなってしまったので、彼は殺しても死なないだろうと決めつけて寝てしまった。そしてようやく彼から電話が入ったのは次の日の朝(現地ではその日の夜遅く)で、やっぱり彼はぜんぜん元気に生きていた。

彼の話によれば、ホテルをチェックアウトし、タクシーに乗ろうとして、ふいにあたりを見回した時、世界貿易センタービルに旅客機がぶちあたるのを見たと言う。これはちょっとすごい経験だと思う。僕の脳裏に、あの、映画のようなシーンが蘇った。不謹慎だとは思ったけれど、「すごいもん見たね。一生もんじゃん」と言ってしまった。そして、またまた不謹慎だとは思ったけれど、「僕も生で見たかったな」とも思ってしまった。あの映像は、ちょっと信じられないくらいに芸術的だった。本当のできごとには見えなかった。映画だとしても、CGバリバリのド迫力シーンじゃなきゃ、あーはならない。

ところで、これだけ大きな同時多発テロ事件はまだ終わったとは言い切れない。そういえば、事件直後のニュースでは、計11機の旅客機がハイジャックされたと言っていた。どこかしらに突っ込んだのは4機。あとの7機はどこへ消えたのだろうか?そしてなぜ、その後の報道ではこのことが話題にならないのだろうか?11機という情報が正しいとすると、日本を含めたいろんな国の特に空港に厳戒態勢をしくというのはうなずける。ハイジャックした11機はまずナビゲーションシステムから外されてしまったらしいので、残り7機がどこにあるのか、あるいはどこを飛んでいるのか、もう誰にもわからない。ということは、仮に7機が国際線の旅客機だとして、どこかで給油をすれば、長距離用のどでかい燃料タンクに燃料を満タンにして、お好きなビルに突っ込めるというわけだ。

さて、
この事件の【欧米寄り】の見かたでは、主犯?はオサマ・ビン・ラディンという人物ということになるようだ。彼はテロリストとしてかなり立派な経歴を持っている。

このあたりのことはニュースでも報道されているが、イスラムの言葉やなんたら原理主義だとか言われてもわけがわからない。僕なんて急に「聖戦士」と言われてもダンバイン*1 しか思い浮かばない。



オサマ・ビン・ラディンという人物は、チョー金持ちの家に生まれている。お父さんはサウジアラビア最大のゼネコン会社グループのボスで、10人以上の奥さんを持ち、子供をいっぱい作りましょうというイスラムのルールにのっとり、もちろん子沢山。奥さん達の国籍は様々らしいが、オサマのお母さんと同郷の人は他にいなかったようだし、オサマには同腹の兄弟もいないらしい。現在、お父さんの会社は他の義兄弟が継いでいる。オサマは子供の頃からずっと、家族の間でも異質な存在だったのだろう。

1979年。ビンラディンが20才を過ぎた頃、ソ連軍がアフガニスタンにやってきた。建前としては、アフガニスタンで活発化してきた反体制運動を鎮圧し、治安を回復するため。でも本当の理由は天然資源が欲しかったことや凍らない港が欲しかったこと。そして、アフガニスタンと隣接するパキスタン(アメリカの同盟国)をぶっつぶしたいから。

これに対し、ソ連の共産主義勢力が大きくなるのを恐れたアメリカは軍をアフガニスタンに送り込む。まさにランボー3 *2 の世界。パキスタンとサウジアラビア、アメリカは協力してソ連をやっつけようとする。
さらに、義勇兵(志願兵)としてパキスタンやサウジアラビアからもイスラム教徒(ムスリム)たちが集まってきた。

イスラムの義勇兵達にとって、これはジハード(聖戦)であった。

ジハードにおけるイスラム教徒で構成された兵隊をムジャヒディン(聖戦士)と呼ぶ。
オサマ・ビン・ラディンも実家から持ってきた数台のブルドーザーで(!)ソ連軍と戦い、イスラム教徒達を解放するムジャヒディンになったのである。彼は、彼自身と協力財閥からの莫大な資金を使って、この戦争を支え、ついにイスラム救国基金=アルカイーダを設立した。

アルカイーダは、イスラム社会の確立のため80年代後半に設立され、アフガニスタンにおける対ソ連軍の戦線に資金と兵力と物資の輸送を行った。

10年かかったけど、ついにソ連をやっつけた。やっと、ソ連が撤退。
ついでアメリカも撤退。

聖戦に勝利したんだから統一したイスラム社会を作ろうってことになるんだけど、みんな自分が親分になりたいから一歩も譲歩せず。内部に数多く存在する勢力間、民族間・宗派間での戦いが激化。
で、みんな疲れ果てた。そこに現れるのがタリバン=イスラム原理主義勢力である。

原理主義(ファンダメンタリズム)とは、教義として書かれた言葉を一語一語真実であると信じ、相反する近代主義や合理主義などを批判・排斥しようとする立場のこと。
例えば彼らにとって、「神は世界を7日間で創った」し、「神はご自分の姿に似せて人を創った」のである。

タリバンはアフガニスタンのイスラム神学生のゲリラであり、各地の内乱を鎮圧し、その勢力を拡大していく。今では戦車だってミグ21戦闘機だって持っている。いつしかビンラディンはタリバンに接触するようになり、強大な資金力を持ってタリバン内の過激派グループの指導者として頭角を現すようになった。

そして、1990年8月。
フセイン率いるイラク軍のクェート侵攻が始まった。
侵攻のきっかけはイラクとクェートが国境線の問題で話し合いがつかなかったことや、同じ地下埋蔵油田から石油を引き上げていることに対してイラク側の不満が爆発したためである。これに対し、石油市場の高騰を恐れた西側諸国はアメリカを中心とする多国籍軍を形成し、イラク軍をやっつけることにした。湾岸戦争の始まりである。
この時、アメリカ軍(多国籍軍)はサウジアラビアを拠点としていた。

湾岸戦争当時のビンラディンの動きはわかっていない。
どうやらサウジアラビアに旅券は取り上げられるわ、見張られるわで大きな動きは出来なかったようである。さらに、湾岸戦争後にはサウジアラビア国籍まで剥奪され、一族からも追放され、スーダンに行く事になるのだが...。

結局、湾岸戦争は終結したけれど、フセインはやっつけられなかった。
それどころか、今度はアフガニスタンに戻ってきたラディンが、イスラムの聖地を汚したアメリカ人に対して怒りはじめてしまった。またまた聖戦である。
93年、世界貿易センターは爆破された。

96年、イラクに対するアメリカの攻撃は【ユダヤと十字軍によるイスラムへの攻撃】だとし、『聖地を占領する米国人に対する宣戦布告』をする。かつての十字軍は、イスラム教とキリスト教が共に聖地とするエルサレムを奪うためにキリスト教が送り込んだ軍団であり、第1回目十字軍はイスラム教徒達を虐殺したことになっている。またしても十字軍がやってきたというわけだ。また、【母国の貧富の差を生んだ原因はアメリカ的自由経済にある】として、反自由主義体制を謳うようになる。

ここに、対アメリカ軍の構図が成り立つ。

米国防省は毎年「テロ白書」を発行している。
その中で97年以降唯一個人名(!)で載っているオサマ・ビン・ラディン。
アメリカも名指しで好き勝手の言われたものだからビンラディンを最も危険な人物としてマークしないわけにいかない。ちなみに彼は、国際手配中。アメリカが500万ドルをかけた賞金首である。

2年後の1998年、アルカイーダは、『ユダヤ人と十字軍との戦闘のための世界イスラム戦線』の旗印のもと、「イスラム過激派グループの力で非イスラム政権を倒し、イスラム教の国々から西洋人を追放する。「すべてのイスラム教徒はアメリカ人であれば普通の市民だろうが軍人だろうが殺し、彼らの同胞も殺す。」という声明を発表した。



「民主主義に対する戦争行為」とアメリカが位置づけた今回のテロ事件。
見かたによっては全く異なるのかもしれない。
というか、今回のテロ事件を歓迎する社会があるのもまた事実だ。
アフガニスタン、パキスタン、サウジアラビアも、タリバンも、そしてアメリカも、世界のあらゆる国や組織は、不安定なあやういバランスシートの上に乗っている。報復につぐ報復を繰り返していれば、この世は敵だらけになってしまうはずだが、昨日の敵は今日の味方、またその逆も起きる。グローバルなパワーゲームで遊ぶ一部の人々にとっては、今回ハイジャックされた飛行機の乗客の命も、兵隊さん達の命も、まあどうでもいいことなんだろう。ハイテク兵器の実験場となった湾岸戦争はTVゲーム戦争と呼ばれた。金やパワーや石油や原子力には興味津々だけど、人命なんて軽い軽い。ブッシュ政権はもう、目をギラギラさせている。
世界平和なんて、あり得ないのかもしれない。

ところで、自爆テロリストが犯行におよぶ日というのは、いったいどんな心境なんだろう。
僕は日本の特攻隊【カミカゼ】を思い浮かべた。なんだか似ていると思った。
その時代や社会の裁きが、それを良しとするかどうかの話ではない。テロリストは怖くないんだろうか?僕には想像もつかないが、怖かろうがなんだろうが、「やっぱりできません」と言って帰って生き延びられるはずもなく、ただただやるしかない、という状況だけは酷似している。
そしてそれは、あまりにも悲しい。


※1:聖戦士ダンバイン
   ガンダムでおなじみの日本サンライズ制作のアニメーション。
   バイストンウェルという異世界が舞台。虫っぽいロボが印象的。

※2:ランボー3 〜怒りのアフガン〜
   シルベスター・スタローン主演。アフガンの馬はよく走る!

2001/09/17

日刊ヨタばなし★スターメンバー




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