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電子メールのはなし。
ヘイヘイミスターポリスマン
あの人を探して
真っ赤なクルマに
派手な車だね
ゴールドのライン
探さなくても見つかるよ
クークズ・ハイハットのスタッフの中に、「携帯電話なんて必要ねーよ」と豪語していたやつがいる。実際に携帯電話を持つ前の彼に言わせると、【外出中】はすなわち電話に出られない状態、手が離せない状態、であるから、電話になんて出なくていいんだ、ということらしかった。一昔前(もう二昔か)は留守番電話も気に入らなかったようで、電話に出ないのは留守だからで、留守ってことはタイミングが悪かったってだけのことなんだから、「後で連絡下さい」なんて言ってねーであきらめろよー、とこれまた豪語していた。ボクがあきれて、「緊急事態ってこともあんだよー」と叱ったときにも、「俺がどこかでのたれ死のうと、おまえの死に目に会えなかろうと、それはそれで巡り合わせなんだからいいんだよ。そもそも人と人との接点にはタイミングってもんがあって、そーゆーのを運命って言ってさ、俺らが決めることじゃないんだからさ。連絡してくれたのしてくれなかったのって嫌な気持ちが残るよか、自然でいいんだよ。そーだろ?」と妙に達観したような口振りだった。
仕方がないからほうっておいたんだけど、これこそどういう運命のいたずらか、こいつと仕事をするはめになった。案の定、仕事の都合でこちらから連絡を取りたいときに、やつはつかまらない。困ったボクは彼を説得し、ほとんど無理矢理携帯電話を持たせることにした。
最初はまぁ、普通に通話だけをしていた。基本的な使い方だ。ボク自身も、携帯電話の機能を駆使してあれもしようこれもしようっていうヘビーユーザーじゃないから、電話は通話できれば充分なわけで、けっこう満足していた。
そして数日後・・・
彼が電話と取扱説明書を持って来た日から、笑える悪夢は始まった。
ちなみに彼は仕事で息詰まるといらいらしだし、ボクがせかせると「しっぽがかいーんだよぅ!うるせーなー!」と逆ギレするので、ボクは彼をさるおと呼んでいる。
さるお「なー、これでメール送れるんだろ?」
ボク 「うん」
さるお「おしえてくれよー」
ボク 「メールなんか使いたくなったんだぁ?」
さるお「いいからおしえろよー」
ボクがやつの電話の設定をしてやってからというもの、やつはボクにメールをガンガン送ってくる。仕事関連の大事な場合もあるけど、大部分はゴミメール。こーゆーのをハマるって言うんだろーなー。
彼は雑誌「アエラ」の中吊り広告が大好き。知ってのとおり、毎週おもしろおかしな1行コピーが書いてある。ボクより電車をよく使う彼は、中吊り広告をボクよりも先に見ることが多い。第一発見者にでもなったつもりか、電車の中でよほどひまなのか、
毎週のようにこの1行コピーをボクに送りつけてくる。
どこ飛んで、ごジャル
人気なくって、さびシーガイヤ
日経なくても平気ん株価
変われ自民、へーんじん
マキコまれたら最後さ
誤射しちゃ、ジェータイだめ
はたまた、ここ2、3回、ジャンボ宝くじの当選発表日の後には、どことどこの売り場から1等が出たとかいういらないことまでなぜかおしえてくれるのだ。どこの売り場かじゃなくてさ、番号のほうをおしえてくれよ。ってゆーかさ、だいたいおまえは宝くじ買ってねーじゃん。
あとは鼻歌。
今日は頭の中で「コンピューターおばあちゃん」が聴こえてるだとか、「ハッとしてグー」が聴こえてるだとか、「センチメンタルジャーニー」の2番の歌詞なんだっけとか、これでもう2日も「Hey!ミスターポリスマン」が続いてるとか、そんなのばっか。
先日こんなことがあった。
ボク 「あのさ、こないだ○○の件でメールくれたろ?あれ見れるかな?間違えて削除しちゃってさー」
さるお「しょーがねーなー」
ボク 「悪いんだけど、そのメール、見せてくんない?」
さるお「いいよ、今手が離せないから勝手に開いていいよ」
ボク 「サンキュー」
ボク 「・・・」
ボク 「うぅ?」
さるお「あった?」
ボク 「おまえのメールの履歴なんだよこれ?」
さるお「なんだよ?」
ボク 「おまえ、アエラしか残ってねーじゃん!!」
さるお「わるいかよ?」
ボク 「あのさ、おまえさ・・・」
さるお「しっぽがかいーんだよぅ!うるせーなー!」
大事な大事な大事なメールは結局見ることができなかった。役に立たないやつだ。それにしてもアエラの履歴しか残さないなんて、なんだろうこいつ。もっとほかに、考えることってないのかよ。
ボクはつくづく、とんでもないやつと仕事をしているなーと思う。たまに本気であほなんじゃないかと思う。
携帯電話が気に入らなかったころの彼は、偶然とか運命とか、そーゆー部分が減っていくのが嫌だと言っていた。どこにいても連絡がつくのはありがたいけど、いったいどこにいるんだろう?っていうミステリーの部分は減っていく。どこそこにいるって言ってるけど、それが本当か嘘はわからない。世界は便利になるかわりに、謎が減り、嘘が増えていく。だからそれは嫌だと。
でもこいつに携帯電話を無理矢理持たせて、ボクにはわかったことがあった。こいつに携帯電話を持たせたところでたいして便利にはならなかったし(大事なメールはとっくに捨てられてしまった)、彼の残した履歴からは彼の価値判断の基準がわからない。彼に関して、ミステリーは減らないだろう。
ボクはつくづく、おもしろいやつと仕事をしているなーと思う。
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