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ヨタばなし★スターメンバー バックナンバー:Vol.02

●メッセージ文化

メッセージとは何か?

message という単語を辞書でひくと「声明書」というのがある。
つまり、僕はこうだ、私はこう思う、と声を大にして言ってしまうということだ。
強い意志表示であり、自己主張であり、アイデンティティそのものといえる。
もちろん「伝達事項」という意味もあるが、単なる伝達ではすまない、チカラがそこにある。
メッセージは、人を動かす。
人は、メッセージを発した人間をけっして忘れない。

偶然かもしれないが、僕の知り合いの外国人は、どいつもこいつも my opinionという言葉が好きだ。
my opinion (僕が思うには)がどうとかこうとかと言いだしたりする。その人個人の考えっていうのは、外国語でながながと説明されても困るのだ。英語が不出来な上に集中力の続かない僕はいつも「あーそーかい」と話を終わらせるはめになる。問題が、都合の悪いことに社会問題とか政治とか、僕の苦手な分野に及んだりするともう目もあてられない。しかしだ。いつもいつも、「僕はこう思う」の「こう」の部分がはっきりしてるっていうのはすごい。
日本人はおとなしい、とよく言われる。僕は外資系の会社でサラリーマンをしていたことがあって、よく外国人と会議を開いていた。日本人は不思議と発言しない。そこに出席していた日本人は、僕みたいなおちこぼれ社員と違って英語が話せる人ばかりだったが、なぜかかたくなに、しゃべるまいとしているようだった。みんなちゃんと話は理解しているから、会議が終わると突然日本人どうしでしゃべりだす。
一体なんなんだ。
何かがおかしい。
言いたいことは山ほどある。そして、言いたいことは言った方がよさそうだ。


ボディアートはメッセージツール

Jリーグが始まってすぐの頃、サッカーの試合を観に行ったら顔にペイントをしたファンが大勢いるのに驚いた。サッカー場に行けばまわりの人は9割方サッカーファンだろうけど、「なかでも僕はめちゃめちゃサッカー好きなんだ!!」って言いたかったんだろう。
色を塗るといえば、ヘンナというのがあるね。この場合は染めるのか。色彩の面で弱いけど、エキゾチックで、ワイルドで、セクシーな自分を演出するツールだ。
本気じゃないとできないボディアートの代表が、タトゥーとボディピアス。なにしろ、基本的には両方とも痛い。そりゃ強烈にもなる。
タトゥーはボディアートの王様的存在で、色彩、デザイン、文字を駆使するから万能なのだ。唯一、具体的で個人的なアイデンティティを表現できる。まるで絵画のように奥が深い。 花や動物、天使や悪魔などのシンプルなものから、恋人の(ジョニーデップの場合は母親)の名前とかいった極めてプライベートなもの、「信念」とでもいうような、なんだかかなりシリアスで複雑な思考のいるものまで、かなり幅広い表現が可能だ。ただし、タトゥーを消すのは容易ではないから、そこに彫るメッセージは、その人が一生背負っていこうと思うほどの、大きな決意や信念、果ては想い出などなど、深刻になってしまうケースが多い。
ボディピアスも部位によって強烈なメッセージを持つ。ワイルドさの表現だったり、セックスアピールだったりする。
本気というのはすごい。タトゥーとボディピアスは、それをしている人を見たとき、とにかく「すごい!!」と無条件に思わせてしまうパワーを持っている。

ボディアートって、何かを伝えようとしている。アイデンティティを主張している。これらはみんなファションの延長線上にあるように見えるけど、まったく別の、スピリチュアルなオリジンが産み出したものに違いない。
これを読んでいるあなたは、例えばヘアマニュキアをしていないだろうか? そう、みんな少しずつ自分の体をデザインしている。
話すことや行動することと同じ、ボディアートは自己主張や意志表示の、重要なツールのひとつらしい。


最強のメッセージツール

話す・書く・歌う・演奏する。
態度に出す、なんていうのもあるかもしれない。
「話す」「書く」は、言葉という強力な武器で、聞く人の心に迫ってくる。でも話し終わった瞬間から、読み終わったその時から、突然それは過去のものに変わってしまう。音はその場に留まってくれないからしょうがない。メッセージを発信している人から、メッセージを発信した人になっちゃうのだ。本ならまたページをめくらなければいけない。聞く気がなければ、読む気がなければ、話にならない。
「歌う」は言葉と旋律で、「演奏する」は旋律とリズムで、直接僕らの心に強く訴えかけてくる。メロディというものの素晴らしさは計り知れない。そうだ、「話す」も一緒だけど、録音すればいいじゃん? 違うんだ。録音した音は、聞かなきゃ話にならないのだ。
あ、僕は別に言葉や音楽を否定するつもりはない。僕はいま文章を書いているし、音楽がなかったら生きていけない。人類史上もっとも注目すべき文化である言葉や音楽は、間違いなく最高のアートだし、最強のメッセージツールだ。僕たちの心に、唐突に、思いがけない感動を呼び起こす。「ライブを聴いて鳥肌がたつ」のは聴いている最中だし、「彼女が言った言葉が頭から離れない」のは、あの時、あの場所で、あの状況で、しかも彼女の声で、だからに決まってる。(かなりくどいわりに曖昧になってしまったが、とにかくそういうことなのだ。)これらは直球なのである。刹那的だからこそ起こりうる奇跡だ。そして僕らは、奇跡という激しい感動を記憶する生き物だ。

ところで、これらの表現するものは、ときに一人歩きする。メッセージを発信した人物と、媒体の結びつきが希薄になることが多いのだ。しゃべった人はわかんないけど、この言葉って有名。バンドの名前は知らないけど名曲。なんてことがある。その時それは、既にひとつの巨大なムーブメントになっている。

さて、あなたが何かを表現したがっているとしよう。選べる手段はいろいろある。
何を選んでも自由だけど、僕自身は、スピリチュアルで、ポップで、刹那的でなくて、個人的で、タトゥーの迫力があるものを探している。


ネクタイして生きたくないし、ドレス着てほしくない

キレイな服がたくさん売られている。
スーツはダブルとシングルがあって、ネクタイは色とりどりに織られている。
ワンピースは花柄だったり、レースだったり、ニットだったり、フォルムが美しかったり。
こういう服は、着ている僕たちをカテゴリ分けしていく。洗練とかスポーティ、ボーイッシュとかフェミニン。当たり前だが、服飾として完成されているこれらは、パーソナルなメッセージを排除していく。そりゃ、スーツの背中に「愛」とか書いてあったらおかしいし、2色の毛糸で編まれた柄が「平等」とかいう文字になってるセーターを僕は着たくない。
例えば今の僕のようにメッセージツールにこだわった場合、洋服って、縫い目とか編み目なんかが邪魔なのだ。どうも自己主張の道具にするのは難しそうだ。

なんとか、肌をデザインしたい。体そのものをデザインしたい。
肌にもっとも近いもの。そして僕がたどり着いたもの。Tシャツ。
一番素肌に近いからこそ、個性的でなければならない。一番シンプルだからこそ、印象的でなければならない。カテゴリ主張ではなく、個性の主張がしたい。
ふざけているのも反抗的なのも個性だから、メッセージの内容は冗談でも皮肉でもかまわないと思っている。
僕がTシャツをデザインするとき考えることが2つある。
「ポップでなくちゃ」「強くなきゃ」である。
Tシャツの肌にタトゥーをいれる。主張を着る。そのTシャツを着ている間、間違いなく、あなたはそれを主張している。
そう、Tシャツのデザインは、メッセージこそが全てを征する。

僕は、いつもネクタイをしめたインパクトのない生き方はしたくない。見た人が驚いちゃうような、すごい個性をぶちまけながら生きたい。
もちろんあなたにだって、いつもドレスでいてほしくないと思ってる。
今あなたが着ている服のことじゃないよ。生き方の問題なんだ。


スピリットをデサインする

僕はロックの精神が好きだ。パンクの美学はさらに大好きだ。
まるで僕なのである。
僕は、みんなが右を向いていると、左を向きたくて我慢できなくて結局左を向いてしまう。左を向きたいんだからしょうがないのだ。僕は、倫理とか常識っていう言葉の意味が、正直言って理解できていないが、理解してしまったらおしまいだとも思ってる。

そういえば、僕は中学に3年間も通ったが(当たり前か)、だれも規則の意味を説明してくれないから、ついに理解できなかった。男の子に許される髪の長さはスポーツ刈りまで。髪が5cmより長くなると切りなさいと言われた。なんでなんだ? 5cmより短い髪が好きなら言われなくたって切る。でも6cmがいいなら6cmまで伸ばすのが普通じゃないのか。個性はいったいどこへ行ったんだ? 6cmの髪が好きなだけで不良と言われても困るのだ。
僕を不良だという先生に、「じゃぁ『良』ってなんだか説明してくれ」と言ったらそれはそれで怒られた。
僕は困っている人を助ける「良い子」だったと思うんだが・・・。
やっぱりどうかしている。

僕たちは、自由に生きるべきだ。行きたいところに行く。したいことをする。
理由のないモノに縛られるなんてばかげているし、カタチのないモノに追われる必要もない。人はみんな個性的に決まってるし、もしも僕があなたとそっくりならば、僕かあなたのどちらかが死んでしまったっていいかもしれない。みんな平等に、1日24時間ある。笑ってないと損じゃないか。人生はおもしろおかしいに決まっているのだから。

僕がデザインするスピリットは、一見、反抗的にみえる。悪い冗談だったりもする。囲いのなかで生きようとするオトナたちへの皮肉である。そして個性は、ときに常識と規則で縛られた社会に逆行する、細い流れのなかにあると思っている。


言いたいことは言った方がいい

これは僕のメッセージだ。辞書に書いてあるように、「声明書」である。
Tシャツという素肌へのこだわりを大事にしたい。女の子たちがエステに通うように、肌に磨きをかけよう。
言いたいことは山ほどある。そして、言いたいことは言った方がいい。

1999/08/05

日刊ヨタばなし★スターメンバー




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